野は交野

 清少納言の枕草子に、「野は嵯峨野さらなり、印南野、交野、駒野、飛火野、しめし野、春日野、そうけ野こそすずろにをかしけれ」とあります。「野は交野」そう思いますが、肝心の「野」はもうきさいち植物園にしかないのではないかと思うほど残念な状況なのです。  いや、それでも痕跡ぐらいは残っているのではないか?そういうことで、探しまわってみます。

きさいち植物園の「野」
きさいち植物園の「野」

 さて、なんで清少納言は交野は「をかし」と思ったのか?
 「野」とは「原」に対して、一般的にはこのように考えられています。
「人手による開発が及ばない草ぼうぼうの平地を「原」という。これに対して「野」はふつう丹念に耕されて田畑や放牧地として利用されている。」
http://kij.cocolog-nifty.com/nihongo/2014/04/post-0f3e.html
 あるいは、野を、「の」でなく「や」という字音に注目すれば人の管理が及ばない領域という意味もあるらしい。また、谷川健一氏によれば、野は傾斜地で原は平坦地。焼畑は野で行われていたという。
 これから考えると、「野」は田のように徹底的に管理された土地でなく、人間が少し手を入れて生活に供するようにした、草木も生えたちょっと広い土地でただの原野ではなさそうです。
 これは今風に考えると、「里山・里地」ではないですか。そこには耕作した畑地もあれば手を入れていない土地もある。雑草も生えているでしょう。しかし、何もないかといいえば、そうでなくきれいな花も咲くし、実もなる。虫もおるし、鳥も来る。逆に茨もあるし蛇もおる。まことに多様な世界なのです。まさにKANANOの雑草の世界ではないですか。決してインスタ映えの美しい世界ではないが、「いとをかし」。清少納言の美意識は、多様性のある雑草の世界にあるのではないかと思うのです。
 それでは雑草の世界を探しに行ってみます。

きさいち植物園の「野」

001:ネコジャラシの野

2018/9/10


 正式にはエノコログサ。以前は使っていない畑か果樹園のようで、いろんな雑草が生え放題で雑然とした場所でした。昨年冬か今年(2018年)の春先にきれいに刈り取られ整地もされていましたが、夏を越して久しぶりに見てみると・・・一面のネコジャラシ。これだけそろうと壮観です。
場所は私部 。第2京阪が天野川を渡る橋の南側の三角地です。


002:免除川右岸堤防

2018/10/30


 散歩の途中で見つけた野。免除川の右岸堤防で野原とは異なりますが、 ちょっと小広い台地になっています。名も知らない雑草が生えているだけですが、開放感あふれる場所でしばし佇んでおりました。晩秋、冬枯れの時期にも来てみたいところでした


003:とんど場地蔵北の野

2018/10/30他


 寺村にとんど場地蔵さんがおられます。その北側になんとも美しい野が広がっていました。単なる休耕田もしくは廃田なのですが、一本の樹(コナラかな?)を盟主とするようにして半ば整地されたようになって緑が広がっていました。ことあるごとに見にっていますが、最近の豪雨や台風のせいか、荒れてきましたね。しかし、とんど地蔵さんは健在です。


004:郡津福田の野

2018/7/10他


   交野病院からの帰りによく寄っていく場所です。明治の地図では福田のいう地名が付いていました。ここも放棄農地(多分)で、雑草が生えているだけですが、なんとなく立ち去りがたい魅力があります。しかし、すぐ傍まで住宅が迫ってきており、開発も待ったなしか?こういうのを無駄と言う人も多いですが、こういう無駄も捨てたものではないと思う。


005:私市・棚田の土手

2017/4/20


 よく通る山手の散歩道脇にある棚田から農道を降ったところにある、ただの斜面です。棚田の土手になっているか。いかにも人工的な平板の斜面でなく、ゆらりとデコボコしている斜面にたんぽぽが咲き競っている様はなんとも言えないのどかさを演出しています。


006:私部南・ケリの原野

2013/5/15他

 

 京阪線と第2京阪がクロスする東南角でケリがけたたましく啼いているので見に行くと、そこには忘れられたような原野が広がっていました。それ以後ケリ観察に通っていましたが、ケリがいなくなっても、原野の季節による変化が美しく、事あるごとに見に行くようになりました。一面の葦原です。こんな野が手付かずによく残っていたものです。


007:森新池堤防

2008/5/11他

 

 溜池の堤防なので斜面かつ人工的で「野」とは言い難くもありますが、野の風情は大いにあります。そうか、季節ごとに手入れされることが野としての風情・景観を保つことになっているのか。不思議と樹木が生えている堤防は見かけません。あるとすれば、それは溜池としての機能がなくなった古池でしょう。


008:私部城址

2015/4/8他

 

 私部城址であるがゆえに開発されずに原っぱとして残されています。しかし荒れた感じはしない。草刈り程度はされるのでしょう、それが野としての新陳代謝を促しているようです。春、夏はその季節の雑草の花が咲いています。秋、冬はみてないなあ。城址公園などとせずにこのままでも美しさはあると思うけどなあ。


009:今は亡き乙邊の野

2016/11/24他

 

 元々は田んぼで、あまり注目もせず横に広がる天野川緑地によく散歩に行きました。2015年頃に耕作しなくなり、突如野焼きが始まりました。それから1〜2年は素晴らしい野が出現しましたが、2018春先から工事が始まり、完璧に破壊されました。この野は田んぼがなくなる前の一瞬の輝きだったようです。合掌。


010:天野川緑地堤防

2016/11/24他

 

 009:乙邊の野と天野川緑地公園の間の斜面で、天野川の堤防でもあります。元々公園の延長でユリなどが植えられていましたが、それも消えていき、雑然とはしているが活き活きとした雑草の天下となりました。時々刈り込みはされるので荒れ放題にはならず季節ごとの植生が楽しめます。乙邊の開発でどうなるか?とってつけたような境界植樹にならないか心配です。


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